キャット探偵事務所(2)

謎の男からの立入禁止区域ジャデンラスまで荷物を届けてほしいという依頼を受け、チーズたち三人はジャデンラスに車で向かった。

 

ミカサ「あのーまだ移動してから十分ぐらいしか経ってませんけど、せっかく買ったハンバーガーが冷めちゃうんで、どこかに車止めて食べませんか?」

フラワー「ほげー、ミカサ一人で全部食うつもりじゃなかったのか?それにしても、まだ昼飯前なのによく食べるなー、だから太るんだぞ」

ミカサ「いや、朝飯食べてなかったんで、今一つ食べて残りを昼に食べようと思ってたんですよ」

チーズ「今10時50分くらいか、飯を食べるにしては時間帯が中途半端すぎるな」

ミカサ「一個くらいなら、おやつみたいなもんですよ」

チーズ「俺はどうも食べる気になれんが、この先にあるパーキングエリアに止めてお前ら二人で食え」

 

パーキングエリアに車を止め、ミカサとフラワーはハンバーガーを食べることにした。

ミカサ「チーズさん、何でこんな変な依頼受けようと思ったんですか。断ってもよさそうな依頼ですけど・・もしかして届け先が豪滝厳造だったからですか?」

チーズはしばらく沈黙してから「そんなところだ」とだけ言った。

ミカサ「豪滝厳造って、グアア草毒殺事件の首謀者ですよね。確か逮捕直前で崖から落ちて死んだとか。でも死体が見つからなかったんですよね。やっぱ生きてるのかなぁ?」

フラワー「その豪滝厳造を崖まで追い詰めたのが、ここにいるチーズだ」

ミカサ「えっ!?そうなんですか!その時まだ刑事だった頃ですよね!」

 

グアア草毒殺事件とは、鯣町のダム建設を反対する町民約100名を町内会の際、豪滝建設の豪滝厳造が潜り込ませたスパイによって殺害させた事件である。殺人方法は、致死率100%のグアア草を混入したワインをスパイが町民たちに「いいワインがありますよ」と言って飲ませた毒殺である。

 

ハンバーガーを食べ終えて数分後、ミカサが言った。「チーズさん箱の中身見てないんですよね?今ここで開けてみませんか?どうせ悪党の豪滝なんかに届けるものですし、開けてもいいんじゃないですかね?」

チーズ「この荷物が豪滝の仲間から送られるものなのか、敵対する者から送られるものなのか、それもまだわからん・・・」

フラワー「私も開けてもいいと思うけどなー。気になるよーん」

チーズ「これはあくまで俺のかんなんだが、箱の中に入っているものは、開けたとたんに豪滝を殺傷できるなにかかもしれない。それが爆弾かなにかまではわからんが」

ミカサ「えっ、やっぱ開けちゃまずいやつですかね?開けなくても爆発とかしないですか?なんか怖くなってきたな」

チーズ「狙いが俺たちの命なら、豪滝に届ける前に爆発する可能性はある」

フラワー「見事に釣られたってことか?チーズ、これが本当に豪滝を殺す目的のものならお前それでも届けるか?」

チーズ「俺も元刑事だ。書かれている場所に本当に豪滝がいるとするなら、殺さずに警察につきだすつもりだ」

ミカサ「もう今の時点で警察に行って事情説明しませんか?やばいですよ爆発したら」

チーズ「そうだな。そうしよう」

 

警察署に向かっている途中、信号待ちをしているときにフラワーが言った。「チーズ、お前が冷静で安心したぞ。もしかしたら豪滝を殺すんじゃないかと思ったからな。ジャットの敵討ちでな」

チーズは黙っていた。

ミカサ「どういうことですか?」

フラワー「ジャットはチーズの刑事時代の同僚だ。チーズとよくコンビを組んでいた。毒殺事件の捜査中、単独で行動していたジャットは、豪滝の仲間の暴力団に殺された」

 

~回想~

ジャットがチーズに携帯で電話をした。「チーズ、豪滝の部下を尾行していたら、猛犬組の事務所に入っていったぞ。毒殺事件の実行者はやはり猛犬組の構成員だ。行方不明になっている記者もいるかもしれない」

チーズ「ジャット、どうするつもりだ?」

ジャット「もちろん乗り込むさ。やつら一網打尽よ」

チーズ「おいジャット、俺たちが行くまで待て!」

「記者の安否が心配だ。すぐ突入する。じゃあまたな」と言ってジャットは電話を切った。

チーズたち捜査一課の車が事務所の前に到着したその時だった。

ガシャッ

組事務所がある四階の窓ガラスが割れ、ジャットが地面に落下するのをチーズたちは目の当たりにした。ジャットは拳銃で何か所も撃たれていた。

「ジャットーーーーーーーーーー!!!!!」チーズは大声で叫んだ。

チーズたちは組事務所に突入し、中にいた連中は逮捕された。グアア草毒殺事件を追っていた新聞記者は、既に別の場所で殺害されていたことが取り調べでわかった。

 

チーズ「俺が絶対に止めるべきだった。ジャットを見殺しにした責任を取り、俺は刑事を辞めた」

ミカサ「そんなことが・・・でもチーズさんは悪くないんじゃ・・・」

チーズ「フラワー、俺が冷静だって言ったな?冷静だったら荷物が届いてすぐにジャデンラスまで向かうと思うか?」

フラワー「確かになー」

プルルルルルル

チーズの携帯電話に知らない番号から電話がかかってきた。

「誰た?」チーズは電話に出てみた。

「ちゃーんとジャデンラスに向かってますかー?チーズさん」知らない男の声だった。

チーズ「お前、俺たちに依頼してきたやつか?」

「さあどうでしょうかねー?まさか警察に届けようなんて思ってませんよね?」と男は言った。

チーズ「よくわかったな。今向かってるところだ」

「ああ、もしかしたらと思ったらやっぱり。そんなことしちゃ駄目ですよ。爆弾のスイッチは我々がいつでも押すことができるんですよー」と男は言った。

チーズ「やはり爆弾か?豪滝を殺すことが目的か?」

「どうでしょうね?爆弾じゃないかもしれませんけど、とにかくジャデンラスに向かってください。お願いしますね」と言って男は電話を切った。

ミカサ「やっぱ爆弾なんすか・・・どうします?」

チーズ「俺たちだけならまだいいが、他の人間を巻き添えにすることは避けたい。仕方がない、ジャデンラスに行くぞ」